インターナルモビリティが進まない主な理由は、制度がないことではなく、社員と社内の仕事を実際に結びつける仕組みが不足していることです。
社内公募制度や異動希望制度を導入しても、応募が集まらない、上司が社員を送り出さない、適した人材を見つけられないといった問題が起こります。
制度を作っただけでは、社内で人は動きません。
「どのような仕事があるのか」
「誰がその仕事に向いているのか」
「どの程度の時間で参加できるのか」
「参加した経験がどのように評価されるのか」
これらを具体的に設計する必要があります。
インターナルモビリティとは
インターナルモビリティとは、社員が部署、職種、役割などの枠を越えて、社内の別の仕事やプロジェクトに挑戦できるようにする考え方です。
正式な人事異動だけではありません。
・社内公募
・部署横断プロジェクト
・兼務
・短期間の業務支援
・社内副業
・社内求人
・専門分野のアドバイザー
このような柔軟な人材活用も含まれます。
企業にとっては、必要な人材を社内から見つけやすくなります。
社員にとっては、転職しなくても新しい仕事や経験に挑戦できます。
インターナルモビリティが注目される理由
採用難が続く中、必要な人材を外部から採用するだけでは、組織の課題に対応しにくくなっています。
一方、社内には現在の部署で活用されていない経験や能力を持つ社員がいる可能性があります。
社員の過去の経験や得意分野を把握し、社内の案件と結びつけることで、既存人材をより柔軟に活用できます。
また、社員が社内で新しいキャリアを作れることは、人材定着や離職防止にもつながります。
ただし、インターナルモビリティは、制度を導入すれば自動的に進むものではありません。
原因1:社員のスキル情報が不足している
社内で人材を探そうとしても、誰が何をできるのか分からなければ、候補者を見つけられません。
多くの企業が把握しているのは、社員の所属部署、役職、資格、現在の担当業務です。
しかし、実際の人材マッチングでは、次の情報も必要です。
・前職での経験
・過去に担当した業務
・社内外のプロジェクト経験
・得意な作業
・興味のある分野
・挑戦したい仕事
・参加可能な時間
ただし、スキル項目を細かくしすぎると、社員が登録や更新をしなくなります。
最初から完全な人材データベースを作ろうとせず、実際に社内で募集する案件に必要な情報から集めることが重要です。
原因2:社内案件の内容が曖昧
「DXに興味がある人を募集します」
「新規事業メンバーを募集します」
このような案内では、社員は自分が参加できるか判断できません。
案件には、少なくとも次の情報が必要です。
・解決したい課題
・具体的な業務内容
・必要なスキルや経験
・参加期間
・週の稼働時間
・成果物
・プロジェクト責任者
・参加によって得られる経験
また、大きな仕事をそのまま募集すると、条件に合う社員が少なくなります。
新規事業全体を担当できる人を探すのではなく、市場調査、顧客インタビュー、資料作成、収支計画などに業務を分解します。
仕事を小さくすることで、参加できる社員が増えます。
原因3:社員が応募をためらっている
社員が案件に興味を持っていても、応募できない場合があります。
よくある不安は次のとおりです。
・現在の上司に悪く思われそう
・今の仕事に不満があると思われそう
・通常業務に加えて仕事が増えそう
・参加しても評価されないかもしれない
・失敗すると現在の評価に影響しそう
案件を公開するだけでは、この不安は解消されません。
プロジェクト参加を正式な業務として扱い、稼働時間や評価方法を明確にする必要があります。
上司の許可を個人で取りに行かせるのではなく、会社の制度として参加手続きを整えることも重要です。
原因4:上司が社員を送り出したがらない
優秀な社員ほど、現在の部署でも重要な役割を担っています。
別部署のプロジェクトに参加させると、現在の業務が回らなくなると考える上司もいます。
この問題を「上司の理解不足」として処理するだけでは、インターナルモビリティは進みません。
社員を送り出す場合は、次の内容を整理する必要があります。
・プロジェクトに使う時間
・現在の業務をどう調整するか
・参加期間
・プロジェクト終了後に得られる経験
・所属部署にどのようなメリットがあるか
社員を送り出した部署だけが負担を負う制度では、管理職から協力を得られません。
プロジェクトで得た知識を元の部署へ共有する、他部署との連携を改善するなど、送り出す側にもメリットを作ることが重要です。
原因5:人事部だけで運用している
インターナルモビリティは人事施策として始まることが多いですが、実際に人材を必要としているのは現場の部署です。
人事部だけが社員情報を管理し、案件登録、候補者選定、調整まで行うと、運用負担が大きくなります。
また、人事部が現場の細かな業務内容をすべて理解することは困難です。
各部署が自ら課題や案件を登録し、人事部はルール整備や全体調整を支援する体制が適しています。
現場が案件を出し、社員が案件を知り、条件に合う社員には企業側から声をかける。
この流れを日常的に回せる仕組みが必要です。
原因6:社内公募を出して終わっている
インターナルモビリティでは、社員が自分から応募する仕組みだけに頼ると、参加者が限られます。
積極的な社員は応募しますが、自信がない社員や、自分の経験が役立つと気づいていない社員は応募しません。
社内公募とあわせて、スキルや経験が条件に合う社員へ個別にオファーすることが重要です。
企業側から「この経験を活かしてほしい」と声をかけられることで、社員自身が新しい可能性に気づく場合があります。
インターナルモビリティを成功させる進め方
小さな案件から始める
最初から全社員を対象にした大規模な制度を始める必要はありません。
部署横断の協力が必要な小さな案件から始めます。
対象部署を限定する
DX推進、新規事業、採用広報など、人材不足や課題が明確な領域から試します。
マッチングの結果を記録する
誰が、どの案件に参加し、どのような成果を出したかを記録します。
成功事例を社内に共有する
実際の事例があると、社員や管理職が参加方法を理解しやすくなります。
運用ルールを改善する
参加した社員、依頼部署、所属部署から意見を集め、稼働時間や申請方法を改善します。
インターナルモビリティの効果を測る指標
制度を導入した後は、異動者数だけで評価しないことが重要です。
次のような指標が考えられます。
・公開された社内案件数
・案件への応募数
・企業側からのオファー数
・成立したマッチング数
・プロジェクト完了率
・参加社員の満足度
・依頼部署の満足度
・社内人材で対応できた業務数
・参加後のスキル更新数
正式な異動が発生しなくても、短期間のプロジェクトや業務支援が増えていれば、社内人材の流動化は進んでいます。
よくある質問
インターナルモビリティが進まない理由は何ですか?
社員のスキルが見えない、案件内容が曖昧、応募しにくい、上司が社員を送り出せない、人事部だけで運用していることなどが主な理由です。
社内公募制度を作れば十分ですか?
十分ではありません。案件の具体化、社員情報の整備、個別オファー、業務時間の調整、評価方法まで設計する必要があります。
小規模な企業でも導入できますか?
可能です。社員の経験が経営者や管理職の記憶に依存している企業ほど、スキルと案件を見える化する効果があります。
インターナルモビリティと人事異動の違いは何ですか?
人事異動は所属部署や職務を変更する方法です。インターナルモビリティには、短期間のプロジェクト参加、兼務、社内副業なども含まれます。
制度を作るのではなく、社内で人が動く仕組みを作る
インターナルモビリティの目的は、社内公募制度や人材データベースを導入することではありません。
社内にいる社員の経験を見つけ、必要としている部署やプロジェクトにつなげることです。
そのためには、人材情報と案件情報の両方を見える化し、応募だけでなく、企業側から社員へ声をかけられる仕組みが必要です。
PARKは、社員のスキルや経験と、各部署のお困りごとやプロジェクトを結びつける社内人材マッチングサービスです。
形だけの社内公募から、実際に社員が部署を越えて活躍できる仕組みへ。
インターナルモビリティが進まないと感じている企業は、制度そのものではなく、マッチングの流れを見直してみてはいかがでしょうか。





